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ホームイベントシンポジウム RIETI政策シンポジウム 企業間ネットワーク研究の最前線 -地理的な障壁を超える『つながり力』-(議事概要) 印刷 開催案内 配布資料 議事概要 イベント概要 日時:2016年3月8日(火)14:00-17:50(受付開始13:30) 会場:イイノホール&カンファレンスセンター Room B (東京都 千代田区内幸町2丁目1-1) 企業間のネットワークが研究・政策の両面で注目を集めている。マイクロデータの充実で実証的・定量的分析が進み、それに合わせた理論の構築も求められている。政策面では、「つながり力」による生産性向上を期待して地理的障壁の削減を図る一方、副次効果への懸念もある。ネットワーク構築のために、今後どのように政策を進めるべきか、またどのような影響が考えられるか。本シンポジウムでは、国際貿易や空間経済学の先鋭な研究者を海外からお招きして、理論、実証、定量的分析それぞれについて、最先端の研究を報告して頂いた。それらを基に会場から質問を集め、研究・政策の両面について、今後の展望についてパネルディスカッションを行った。 議事概要 開会挨拶・イントロダクション 藤田 昌久 (RIETI所長・CRO/甲南大学特別客員教授/京都大学経済研究所特任教授) 技術の向上で輸送費が下がるにつれ、生産のグローバル化、集積力の強い地域へのローカル化、オープンな知識活動が発展し、複雑なネットワークが形成されてきた。また政策でも「つながり力」が注目されている。これを背景にRIETIでは「組織間の経済活動における地理的空間ネットワークと波及効果」のプロジェクトを進めてきた。本シンポジウムでは、特に企業間取引ネットワークとその経済社会的な意味合い、政策提言について議論を深めたい。 ネットワークの形成は効率性を高める一方、ショックが全体に波及する脆弱性も生む。たとえば規模の経済が働く自動車産業では、輸送費の低下で基幹部品生産のローカル化が進んだ。結果、東日本大震災のショックは、日本全体、さらにはアジア各国、アメリカまで波及した。産業を広げて見ても、関連企業が被災した企業の割合は大きく、密なネットワーク形成が伺える。GDP比率では約4%の東北地域でのショックが日本全国・世界にまで広がった。これは教科書的な完全競争下の需要と供給の関係では説明できず、研究・政策ともに関心を集めている。 一般的には企業の生産性や経済厚生の上昇が見込まれるため、地理的な障壁を下げるための政策が進められてきた。では知識の長期的な増進にとっても、障壁のない世界が望ましいだろうか。イノベーションには、固有知識と共通知識のバランスが重要となる。共通知識がなければ通じ合えないが、固有知識がなければ集積のシナジーが薄まる。都市部への一極集中は、短期的にはシナジーを生むが、長期的には共通知識の肥大で停滞要因ともなる。これを防ぐには、あらゆる地域・組織間での知の交流、人材の流動が重要となる。 講演 講演1 「国際貿易と企業間ネットワークに関する理論的な視点」 サミュエル・コータム (エール大学ジェームス・バロウズ・モファット記念経済学部教授) 企業間ネットワークを議論する前に、その理論と深く関係する国際貿易の理論について考えたい。この20年、新たな観測事実が確認され、そのような実世界を理解するために、より優れたモデルの構築が常に求められてきた。データの観測と理論の構築の両者を関連させながら、議論が繰り返されてきたのだ。この期間に、世界各地で、貿易量は他の経済活動に比べ、大幅に増えた。ある研究によると、貿易の利益はその国の消費に占める国内生産の割合に逆相関することが分かっており、貿易の利益が増加したことが示唆される。 だが、この世界の変化が、理論の発展を導いた訳ではない。我々はただ、世界の厚生をどう改善すべきか議論するため、より現実に合った理論を作り、今まで無視していた特徴を測り、一般均衡の枠組みに組み込もうとしてきたのだ。それでも分からないことは数多い。たとえば異質性を考慮することは、供給側ほど、需要・買い手側では進んでいない。同様に、輸入に関する貿易の理論は、輸入が輸出よりも貿易の利益を測る上で重要にも係らず、輸出ほど進展していない。 企業間ネットワークも、長い間、実世界に見られる特徴で、最近の傾向ではない。これを貿易理論に組み込む必要があり、せざるをえないのは、ミクロなネットワークのデータや指標が利用可能となって、説明が求められているからだ。理論が構築されれば、より適切な政策提言も可能となるだろう。また、企業の異質性や粒状性を考慮したことにより、貿易理論のパズルや欠点が解決されたように、ネットワークのモデル化により、需要・輸入側の理解が深まるかもしれない。また、企業のボーダーに関する議論においても、国際貿易で議論されてきたように、企業内のタスクとアウトソースされるタスクの違い等を、考える必要がある。 国際貿易と企業間ネットワークの間には以下のような類似点がある。国は、ある財の国内の生産を止め、代わりにそれを他国から購入できる。企業も同様だ。企業は、ある企業内のタスクを止め、代わりに他から中間財を購入するかもしれない。となれば生産費用のうち、中間財が占める割合が増えるだろう。企業のボーダーを考慮することにより、国際貿易の現象を、より緻密に捉えられるかもしれない。 また、アイデアも企業間を移動しえ、物の移動より重要かもしれず、経済学の新たな課題である。企業間ネットワークを通じてアイデアが流れ、企業が互いに知識を共有することで、大きな利益に繋がる可能性がある。 講演2 「国内および国際貿易における企業間ネットワーク:実証からの示唆」 アンドリュー・バーナード (ダートマス大学タックビジネススクール ジャック・バーン記念国際経済学教授) 今までは、国際貿易の議論において、生産側の特徴に注目し、買い手側の特徴を考慮してこなかったが、買い手側にも目を向け、その意味を考えるべきである。企業がどう生産ネットワークを築き、取引のペアにより価格、生産量、厚生にどう影響するのかも、考えねばならない。こうしたつながりを阻害する貿易費用や政策費用が厚生に大きく係わるかもしれず、そのため、深く理解する必要がある。 私達は、輸出を行う製造業者は、輸出する財を全て自ら生産していると考えがちだ。だが実は、生産する以上の製品を輸出していると研究が示している。他の企業から製品を仕入れ、それを自らの流通ネットワークで輸送しているのだ。今の理論モデルでは、この現象をうまく説明できないが、恐らく財がまとまって手に入ることが買い手に価値となるのだろう。政策的にも重要な事であり、たとえば輸入障壁は、この財の束に組み込みうる製品を、制限しうるであろう。 企業間のつながりについては、複数の国の研究から、多くの企業は市場でごく少数の取引相手しか持たないが、大半の取引の一方は、多くの企業とつながった大企業であることが示されている。地理もつながりの形成に重要だ。たとえば日本のデータによる研究で、つながりのほとんどが同じ地域内で形成され、大企業のみが遠く離れた売り手も見つけられることが示されている。さらに、大企業はさまざまな規模の企業とつながり、小さな企業は小さな企業とつながりにくく、大企業とつながる傾向にある。つながりの形成に、費用がかかるからだ。実際、企業を探す費用が外生的に下がることで、企業間のつながりが増え、パフォーマンスが向上することが、研究で示された。 他にもたくさんつながりについて分からないことがある。たとえば、どんな費用がマッチングに重要で、生産ネットワークはどう進展するのか。またネットワークを通じて知識が浸透すると仮定しがちだが、これを直接示した研究はない。 輸出企業と輸入企業の異質性が考慮された市場支配力を持つようなモデルでは、契約選択も重要だ。貿易費用が下がると、ある製品では輸出企業と輸入企業が契約を変更でき、国内の買い手を犠牲に利益を得うることが、研究で示されている。 ネットワークの研究は、まだ始まったばかりで言えることは少ないが、厚生への示唆は非常に大きいと考えている。 講演3 「貿易、産業間のつながりと労働市場のダイナミクス:定量的な示唆」 ロレンツォ・カリエンド (エール大学経済学部准教授) マクロの経済活動の変動は、産業ショック、地域ショック、産業と地域の交差ショックの3つに分類される個別のショックにより引き起こされる。この個別のショックは、産業連関、地理的要因、地域間貿易、移民という4つの重要なメカニズムを通じ、経済全体に影響を及ぼす。 産業連関では、他の産業とどれだけつながっているか産業による違いを捉えられる。地理的要因では、一部の地域に集中する産業や、各地域に一様にある産業があり、ゆえに産業によってショックが一部の地域により影響したり、ほぼ全体に影響したりする。地域間貿易も重要で、特に大国なら、国際貿易よりも重要となりうる。またショックの後、労働者をはじめとした資源は地域間を移動する。 この4つのメカニズムを考慮し、異なる個別のショックの波及を定量化するモデルの構築を試みる。個別ショックとして、ある地域・産業での生産性の急増、地域間の輸送費の減少、そして日本経済に係る結果、3つの例を紹介したい。 2002年から2007年にかけて、カリフォルニアでコンピュータエレクトロニクスが急成長した。最も利益を得たのは同地域だが、他の多くの地域も利益を得た。同産業の製品は、他産業の生産で重要な中間財で、かつ他地域にも輸送されたからだ。しかし周辺地域は、カリフォルニアへ生産性の高い企業や労働者が流出し、損失を被った。アメリカ全体では、この局所的なショックから厚生が向上し、NAFTAによる厚生への影響と比べても大きな効果があったと分かった。 また、アメリカの地域間の輸送費が無くなれば、全体の生産性は3.62%、GDPは10.54%、また厚生も大幅に上昇することが確認された。地域間貿易のゆがみが減れば、特に大国なら、経済全体に大きな効果がありうるのだ。 日本経済への影響については、以下のことが確認された。NAFTAの影響は貿易転換効果により負の効果があるが、軽度である。1995年から2010年の間に結ばれた世界の地域貿易協定により、実質所得が4%上昇した。また中国の生産性の急上昇も、安価な中間財の輸入が可能となり、利益に繋がっている。 この分野の研究は、まだ拡張することが可能であるが、データへのアクセスが制約になっている。もっとデータがあれば、同じ手法でより多くを知ることができ、ショックが経済全体にどう波及するのか理解するのに、より良い手法を生み出せる。 講演4 「集積と地理的な波及効果からの示唆」 ロバート・ディークル (南カリフォルニア大学経済学部教授) 経済活動はなぜ一部の地域に集中するのか。1つは、集中が生産性上昇につながる、集積効果があるからだ。しかし1カ所のみに集中しないのは、混雑費用や土地価格という、分散の力も働くためだ。これらの効果の強さは産業により異なる。日本では、金融業は、集積効果が遠くまでスピルオーバーしないため、製造業に比べて集中すると、研究が示している。 クルーグマンのモデルは、集積する他の理由を説明している。企業は製品の需要が大きな場所で生産したい。そうすれば輸送費を節約でき、従業員に支払うお金をもっと確保できるので、それが労働者をさらに惹きつける。製品の供給増加により価格が下がり、これも労働者を惹きつけることとなる。だが一部の企業は、移動できない農業労働者がいる地方での生産を選ぶため、複数の都市が均衡では存在する。輸送費が下がると、企業は集積して農業労働者に製品を移出するようになり、集積がより進む。対して、ヘルプマンのモデルは、輸送費の低下が分散を促すという反対の予測を導く。移動不可能な土地と移動する労働者を考慮するため、輸送費の削減で、安価な土地価格を求めて各地域に経済活動が分散しうるのだ。したがって、輸送費が集積に及ぼす影響は、信じるモデルでまったく異なる。 日本の生糸産業は、興味深い一例だ。明治維新後、日本では輸送費が外生的に急減少した。生糸は重要な輸出産業となったので、輸出市場に近い沿岸地域に同産業が集まるとクルーグマンから示唆される。だが、生糸産業は地方に留まった。蚕にえさを与え、繭をかける上で必須な桑の木が、移動不可能な生産要素だったからだ。政府が富岡を選んだのも、生糸産業の伝統があったからだ。興味深いのは、従業員は日本全国からきており、移動可能な生産要素だったことだ。生糸産業については、ヘルプマンの方が合っているようだ。 別の研究では、産業集積が日本のTFPの成長を非製造業では促すが、製造業では促さないことが示された。これらから、製造業では概して、非製造業ほどの動的な要素による外部性が、見られないと伺える。別の側面だが、能力を持つ人が集い、育つような都市となるには、優れた大学だけでなく、多様な文化活動も必要だ。需要がある人は、その地に魅力がなければ、去ってしまうからだ。 パネルディスカッション イントロダクション 齊藤 有希子 (RIETI上席研究員) 個別のショックがネットワークを通じてマクロへ及ぼす影響を経済学的にどう説明すべきか、また新々貿易理論の発展の中で企業のネットワークをどう考えるべきか、この2つの潮流からネットワークが経済学で関心を集めている。 ネットワークの構築においては地理的障壁が重要であるが、経済活動一般と知識生産活動とで集積の傾向が異なることから、人とモノの移動の間で障壁の効果が異なることが示唆される。さらに障壁は金銭的・時間的コストに分けられ、その効果も短期・長期、正と負とに分けられる。地域・企業・人の性質によっても効果は異なるだろう。 障壁を下げる政策としてこれまでクラスター政策、貿易自由化、交通インフラの整備が進められ、将来的には中央リニア新幹線によって東京から大阪に広がる仮想的な巨大都市の形成まで見込まれている。こうした障壁の削減はどのような効果を及ぼし、またそれに対してどのような追加的政策がとられるべきだろうか。 ディスカッションおよび質疑応答 浜口 伸明 (RIETIプログラムディレクター/神戸大学経済経営研究所教授): 質疑応答のセッションから始める。各パネリストに何点か、会場からのアンケートによる質問表をもとにお聞きしたい。 質問1: 特定の産業に着目してネットワーク分析をしても良いか。 コータム: ある産業に絞って研究すればその詳細が理解でき、広い視点でネットワークを研究すれば一般化できる。これらはトレードオフだ。私は両者に分析の余地があると思う。 質問2: 企業間取引ネットワークの形成をモデル化するには、マッチング理論の応用がもっともな手法だと思われるが、これを用いる場合の難点は何か。 コータム: 労働経済学のジョブサーチモデルは良く類似していて、ここから考え始められるかもしれない。だが、1人の雇用者のみに労働力を提供する労働者と違い、製品は複数の買い手に供給できる。利用する文脈に従ってモデルを応用する必要があり、その応用がより適切になるよう、進める必要がある。 バーナード: 典型的なマッチング理論のペアは1対1で、それぞれの属性で最も優れたもの同士がまずペアを組み、次に良いものが組み、と続く。だが企業の場合は異なり、多くのペアと活動は、多対多の関係だ。誤った結論に至らないため、我々はモデルが正しくデザインされているか、確信する必要がある。 質問3: 売り手と買い手のマッチングで、消費者も異質性も考慮できるか。 バーナード: モデル化する上で、あらゆる面の異質性を考慮することが、必ずしも役立つ訳ではない。消費者の異質性は、企業と消費者の関係においてに重要かもしれないが、売り手と買い手の異質性を考慮することさえ難しい。現時点では、3つ目の異質性の考慮は私には出来ない。 質問4: 新新貿易理論を新経済地理学に拡張、あるいは組み込むことは可能か。 バーナード: 齊藤氏との共同研究で、より多くの優れた供給者を見つけることにより、企業の限界費用を下げることを論じている。集積すれば、よりたくさん供給者がいるので、限界費用の削減につながり、ある種の集積効果が生じるだろう。貿易理論で企業の異質性を考えることで、距離の役割についての理解が当然進むだろうし、ここに新経済地理学と貿易理論の関係性があると思う。 質問5: 企業間取引に関して、アメリカではどんなデータが利用可能か。 バーナード: あまりないが、経済学的疑問に答える上で、アメリカのデータは必ずしも必要ではない。 質問6: カリエンド氏の分析と、アセモグルのモデルの相違点、類似点は何か。 カリエンド: 我々の研究は、アセモグルの研究に補完的なものだ。彼は、産業連関表の特性を導入し、産業ショックが経済全体にどう影響するかに主に着目している。地理的要因や、地域ショック、そして企業の淘汰は考慮していない。私のモデルでは、最も生産性の高い企業が、ショックを生き残り、輸出できる。これらは地域間ネットワークに影響する、重要な経路だ。 質問7: 地域間のゆがみの代表例は何か。 カリエンド: アメリカ内部で財を輸送する際の費用の90%は、距離だと分かっている。規制も係るだろうが、大半は運送費用が原因だ。これが削減できれば、利益とスピルオーバー効果を得られるだろう。 質問8: 東京で働く生産性が高い人の中には、実は東京以外の地域に居住する人が多くいる。ディークル氏の研究は、これをどう考慮しているか。 ディークル: 通勤圏を広くみても、東京でかなり高い生産性が観察される。ゆえにこれは、東京の外から通勤してくる人々とその東京での生産による特異性が原因ではないだろう。 質問9: 輸送費の低下で集積と分散のどちらが起きるかは、産業で違いそうだが、どう思うか。 ディークル: 産業の特徴と、組合せによって、産業間の異質性はまず存在するだろう。実際、産業の特徴に関して、たくさんのケーススタディと実証研究がある。やや話が変わるが、国内外問わず、人はかなり移動しうることを強調したい。アメリカに比べて日本が必要なのは、行政がある地を開発したい場合、才能を持つ人が住みたがるよう、魅力ある場所にすることだ。 浜口: 政策について議論したい。距離による摩擦の削減のため、国内的にも国際的にも、多くの政策が試み、作られてきた。これに関して質問する。 質問10: 東京-大阪間のリニア中央新幹線が完成すれば、物とアイデアが行き交う巨大地域ができるが、どのような影響が生じるか。 コータム: ディークル教授と齊藤氏の発表によれば、金融部門が東京から製造業を締め出し、そして日本では知識生産により集積が見られる。アイデアは同じコストでどんな距離でも移動できると考えがちだ。だが皮肉なことに、アイデアが重要な産業ほど集まることが大事で、リニアと集積から最も利益を得るようにも思う。 バーナード: アイデアは容易に移動できると考えがちだが、複雑な考えを交わし、理解するには、同じ場所にいることが重要なのだろう。リニアで集積が生じるかもしれないが、その場に留まることも可能となるかもしれない。齊藤氏との共同研究で示唆されるのは、リニアで遠く離れた供給者を見つけられるので、近くに集まる必要性がなくなるということだ。産業ごとで、こうした力の働きは異なるだろう。だが知識労働者は、魅力的な場所に住むことを望み、集積するため、地域間格差という別の政治的問題につながりうる。 カリエンド: アメリカのある町は、昔は運河で名をはせた街だった。だが財の輸送にもはや運河は必要なくなり、近年はその町から人口が流出している。技術の発展で景気づく地域もあれば、不況に陥る地域も生じうる。国内の摩擦が減れば、一般には厚生は上昇する。だがそれで損失を受ける地域も実はあることも、心に留めねばならない。 質問11: クラスター政策のように、集積を促すことで、何が期待できるか。特定の場所に、より集積を集中すべきか。 バーナード: どの産業がどこに集積すべきか、我々は知っていると思いがちではないかと私は懸念している。供給者の近くにいることで、企業が大きな利益を得うることは確認されているが、この利益が、そのためにかかる費用を上回るほど大きいのかは、測るのも難しく、確信できない。 質問12: TPPのような、貿易の自由化を促進する政策はどう思われるか。 コータム: その種の政策は一般には国に良いものだ。唯一の懸念は、特定のビジネスが交渉を握って特別な取引を得ることで、一般市民が恩恵を受けられないことだ。 カリエンド: 最近の研究で、日本で関税がなくなった場合の仮想的なシナリオを考えた。僅かな利益しか得られなかったが、これは日本の関税がすでに低いからだ。TPPで議論されているのは、恐らくまた別の貿易費用であり、その他の貿易を促進するような方法であって、もっと大きな利益があるはずだ。たとえば私の故郷のウルグアイでは、輸出に1日から1カ月に及ぶ検閲が求められる。こうした規制が減れば、輸出するものにはきっと利益がある。 質問13: 格差の問題を対処するのに何か政策手段はあるか。 カリエンド: 我々の手法で、誰が利益を得て損を被るのか、定量化できるので、実際にみんなが豊かになるような、再分配の案を考えられるかもしれない。アメリカでは、格差が存在する1つの理由は、大きな移動費用である。まだこの費用が何かは分からないが、こうした費用を削減できれば、潜在的な損失を防ぎ、利益が行き渡るようにできるかもしれない。 バーナード: デンマークでの研究で、解雇された労働者が5年後には、解雇されなかった労働者よりも、高い賃金を得ていることが分かった。理由の一端は、デンマークの労働市場が柔軟で、短期的に支援も得られるためだろう。これは、格差拡大をもたらす思われたショックが、結果的には格差拡大への影響をほとんど及ぼさないこともあるということだ。 ディークル: 興味深いのは、ある調査によると、2000年から2013年にかけて日本では資産所得の格差は広がらなかった。日本では資産価格が上昇しなかったためだ。ゆえに格差問題があるなら、賃金面である。 浜口: 国内のマッチングで企業のパフォーマンスを向上することを論じたが、これは国際競争の中での企業の競争力にもつながりうる。これに関してお話頂きたい。 コータム: ネットワークの改善によるマクロ経済的利益を考える良い手段の1つは、生産性だろう。我々は実は国際貿易を、新たな技術へのアクセスをもたらす手段としても考えている。ネットワークが生産性の向上をもたらすと見なすのは、問題を考える上で良い最初の試みだろう。 バーナード: 因果関係は明らかでないが、より豊富に供給者がいる企業ほど、国際市場でも成功していることが分かっている。推測だが、国内でのつながりの形成に成功することが、国際的な成功に繋がるのではないかと思う。 浜口: インフラはネットワークを豊かにし、企業の生産性の改善に繋がるが、その建設の際、必ずしもこれは考慮されていない。こうした利点を費用便益分析に組み込むこともできると思うが、これについて議論頂けるか。 バーナード: 九州新幹線の開通で、供給者を探す費用や定期的に意見を交換しに行く費用が下がり、企業の生産性と売上高が上昇したことを、我々は研究で示した。インフラが生産性の向上に繋がるのはほぼ間違いないだろうが、その大きさが重要だ。これは国際関係にもいえることだろう。日本企業と外国の取引相手との国際的サプライチェーンを、より深く、頑強なものとするには、どうすれば良いか。新幹線とリニアは、サーチコストをきっと下げるが、とてつもない費用もかかる。サーチコストを下げるためなら、他の手段もあるはずだ。供給側の費用便益の観点からこれを考えることはまだされておらず、国際・国内インフラの両方ですべきことだ。 ディークル: 数十年前に受講した古典的な貿易モデルの授業で、教授が、インフラプロジェクトはそれ自体で持続可能であるべきで、少なくとも損失を出してはならないと述べた。私は、インフラプロジェクトはいつか利潤要件を満たすべきだと思う。日本のGDPの成長のため、各プロジェクトは費用便益分析により評価されるべきだ。 イベント シンポジウム ワークショップ BBLセミナー 終了したセミナーシリーズ 情報発信 ニュースレター 更新情報RSS配信 Facebook X YouTube 研究テーマ プログラム (2024-2028年度) プログラム (2020-2023年度) プログラム (2016-2019年度) プログラム (2011-2015年度) 政策研究領域 (2006-2010年度) 経済産業省共同プロジェクト プロジェクトコンテンツ 調査 フェロー(研究員) 論文 ディスカッション・ペーパー(日本語) ディスカッション・ペーパー(英語) ポリシー・ディスカッション・ペーパー(日本語) ポリシー・ディスカッション・ペーパー(英語) テクニカル・ペーパー(日本語) テクニカル・ペーパー(英語) ノンテクニカルサマリー 英文査読付学術誌等掲載リスト Research Digest 政策分析論文 調査レポート 論文検索サービス 出版物 RIETIブックス(日本語) RIETIブックス(英語) 通商産業政策史 著者からひとこと RIETI電子書籍 年次報告書・広報誌(RIETI Highlight) その他出版物(日本語) その他出版物(英語) イベント シンポジウム ワークショップ BBLセミナー 終了したセミナーシリーズ データ・統計 JIPデータベース R-JIPデータベース CIPデータベース JLCPデータベース 日本の政策不確実性指数 産業別名目・実質実効為替レート AMU and AMU Deviation Indicators JSTAR(くらしと健康の調査) RIETI-TID 長期接続産業連関データベース マイクロデータ計量分析プロジェクト 海外直接投資データベース ICPAプロジェクト リンク集 コラム・寄稿 コラム Special Report EBPM Report フェローに聞く フェローの連載 世界の視点から 特別コラム 新聞・雑誌等への寄稿 特別企画 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